債券Q&A(II-8)|金融政策はイールドカーブにどう影響するの?

ここでは、金融政策はイールドカーブにどう影響するのかについて、解説します。
国債のイールドカーブは、基本的に「将来の政策金利」への期待感を土台として、そこに年限に応じたリスク・プレミアムを上乗せして形成されます。このため、1回や2回の利上げ/利下げに留まると市場が見ると、短い年限の金利が動く一方で、長い年限の金利は動きにくくなります。このように今後の金融政策をどう見通すかという点は、イールドカーブの見通しを立てたり、債券の投資戦略を考えたりする上で非常に重要です。
ここでは、(1)政策金利の方向感がより明確な時期と、(2) 政策金利の方向感がより不透明な時期とで、イールドカーブの形状がどのように変化したのかを、複数の時点で比較してみます。
利上げ後に将来の利下げを想定、順イールドから逆イールドに(2021年12月→2023年8月の米国債市場)
欧米では、①パンデミックへの対応で行われた金融緩和の反動でインフレ懸念が急拡大した2021年末頃には、将来の金融正常化の可能性を一部に織り込んだタームプレミアムの上昇により、徐々に傾きが急(スティープ)な順イールドになっていきました。
その後、2022年から急激な政策金利の引き上げ(利上げ)が行われ、これに伴い各通貨上の国債イールドカーブも全体として見ればほぼ政策金利の引き上げ水準に並行するように水準を切り上げていきました。ただ、ある程度の利上げが進んだ後は、こうした利上げはあくまで一時的な政策であり、インフレ傾向が鎮静化すれば将来の政策金利も引き下げられるだろう、との市場の期待感が高まりました。
この結果、② 2023年8月頃には、金利の将来見通しを反映して米国債のイールドカーブは短期金利が高く長期金利が低い、逆イールドとなっていました。

(出所) BloombergデータからJTG証券で作成
利下げ後に将来の利上げを想定、逆イールドから順イールドに(2024年6月→2025年12月の米国債市場)
先のように、より長い期間を取れば政策金利の引き上げと長期金利の上昇は連動しますが、もう少し短い期間を見ると債券市場では長期の金利が先行して将来の変化を織り込み、すべての年限の金利が単純には連動しないこともあります。
例えば、① 2024年6月頃には行き過ぎた政策金利高への懸念が高まり、債券市場では将来の利下げをより強く織り込むようになり、逆イールドとなりました。しかし、その後に、②利下げが実現化した後の2025年12月頃には、短期金利が低下する一方、長期金利にはタームプレミアム(長い金利の方がリスクがある分、超過利回りが乗る)などの影響が残り、おおむね順イールドとなりました。
この間のイールドカーブの動きを見ると、短期の政策金利は低下したにもかかわらず、むしろ超長期(20年~30年)の残存期間の金利は上昇していたことが分かります。
ですから、短期の政策金利の利上げや利下げが実現する前には、債券市場は既にこうした動きを織り込んでいることも多く、短期の金利予想と長期の金利予想では、異なる考え方や分析が必要となります。

(出所) BloombergデータからJTG証券で作成