債券Q&A(II-9)|イールドカーブの変化を想定した債券投資戦略とは?

金利予想と債券価格
債券の価格は、一般に市場金利と反対方向に動きます。市場金利が低下すれば、すでに発行されている債券の相対的な魅力が高まり、価格は上昇します。反対に、市場金利が上昇すると、既発債の魅力が薄れ、価格は下落します。そのため、今後の金利がどのように動くと考えるかによって、選ぶ債券も変わります。金利の先行きをどう見るかは、債券の年限やクーポンを選ぶうえでの基本的な出発点です。

ただし、現在のイールドカーブのうち、長期の債券利回りには、市場参加者が予想する将来の政策金利の変化が、既にある程度織り込まれています。重要なのは、短期的に政策金利が「利下げになる」「利上げになる」と考えることではなく、自分の今後数年間の金利予想が債券市場の織り込みよりも低いのか、高いのかを見極めることです。
将来、政策金利や市場金利が継続的に低下すると予想する場合は、価格上昇の余地が大きい長期債が有力な選択肢になります。一般に、満期までの期間が長く、クーポンが低い債券ほど、金利変動に対する価格感応度(デュレーション)が大きくなります。そのため、金利低下局面では大きな値上がり益を得やすい一方、予想に反して金利が上昇した場合の値下がりも大きくなります。
反対に、政策金利や市場金利が継続的に上昇すると予想する場合は、短期債を中心に選ぶことが基本です。残存期間が短いほど金利上昇による価格下落を抑えやすく、償還後の資金を、より高い金利で再投資できる可能性も高まります。高クーポン債は利金収入が厚く、同じ満期であれば低クーポン債より価格感応度が小さくなる傾向があります。また、繰上償還の判断が発行体に委ねられるコーラブル債より、満期が確定している満期一括償還債の方が、保有期間中のキャッシュフローと価格変動リスクを見通しやすくなります。
短期金利と長期金利の違い
ここで、重要となるのは「継続的に」上昇または低下するのかどうか、という点です。現実の金利は、長期間にわたって同じ方向に動き続けるとは限りません。中央銀行が政策金利を上げ下げすると、イールドカーブ上の短期債利回りは連動して動きますが、すべての債券の利回りが同じように動くわけではありません。長期債の利回りには、将来の景気や物価、今後の利上げや利下げに対する市場の予想が反映されます。短い期間の金利が大きく動く一方で、長い期間(10年、20年、30年など)の金利は、あまり動かないこともあります。

例えば、中央銀行がインフレ懸念の増減を、政策金利が一定の範囲で上下に調整することでうまくコントロールしている局面を考えてみます。この場合、長期の金利には将来の景気や物価、今後の利上げや利下げにより金融政策の効果が生じた後の市場の予想が反映されるため、短期金利が大きく動いても超長期の金利はあまり動かないことがあります。さらに、政策金利が引き上げ(引き下げ)られている途中でも、将来の景気悪化(改善)や利下げ(利上げ)が予想されれば、長期金利が先に下がる(上がる)場合があります。つまり、「政策金利が上がるから、すべての債券利回りも同じ幅で上がる」とは限りません。
何を重視して債券を選ぶのか
こうした局面で一層重要になるのが、投資家自身の資金需要です。何年後に、どの程度の換金が必要になるのかという「負債側」の制約に合わせて債券を選ぶことは、短期的な相場観よりもはるかに重要です。もし長期間、売却せずに保有できる資金であれば、短期的な時価変動に過度に左右されず、直利、すなわち購入価格に対する年間利金の割合を、安定収入の目安として重視する運用も考えられます。(ただし、直利だけでは償還差損益を反映できないため、最終利回りと併せて確認することが大切です。)一方、近い将来に換金する可能性がある資金では、利金収入を多少抑えてでも、残存期間の短い債券を選ぶ方が合理的です。換金時に時価評価損失が実現してしまうと、投資以前に生活設計が崩れてしまうためです。

債券投資では、金利予想を当てること以上に、予想が外れても「必要な時期に必要な資金を確保できる設計」が重要です。金利見通し、価格感応度、キャッシュフロー、換金時期を一体として考えることが、安定した債券運用の基本となります。