世界の自然を守るパンダとは(9月11日)
自然保護団体WWFの設立
1961年9月11日、スイスのモルジュで、現在では世界最大規模の自然環境保護団体である国際NGOの世界自然保護基金(WWF : World Wide Fund for Nature)が正式に設立されました。同団体は、2026年で65周年を迎えます。
発足のきっかけは、前年に生物学者ジュリアン・ハクスリーが英紙『オブザーバー』に寄せた三つの記事でした。アフリカで進む野生動物の乱獲や生息地の破壊を伝えた記事に対し、実業家ビクター・ストーランが、自然保護の資金を集める国際組織を作ろうと手紙で提案。これを受け、科学者や広報の専門家らが設立に動きました。
当初の名称は「世界野生生物基金」。最初の拠点は、国際自然保護連合(IUCN)の事務所に間借りして設けられました。設立に先立つ同年5月には、資金の必要性を訴える「モルジュ宣言」を発表。自然保護区の管理や専門家の派遣など、動物を守るために必要な経費が具体的に挙げられています。
(出所) "WWFの歴史"
団体のモチーフにパンダを選ぶ
その団体の看板に選ばれたのが、ロンドン動物園のジャイアントパンダ「チーチー」でした。実は、チーチーの行き先は初めから英国に決まっていたわけではありません。
1958年の米誌『LIFE』によると、米国の動物園も受け入れを希望していましたが、当時の米国による対中禁輸措置が障害になりました。米財務省はパンダを例外扱いせず、米国入りは実現しなかったのです。その後、ロンドン動物園に迎えられたチーチーは人気者となりました。
WWFの創設者たちが求めていたのは、言語が違っても伝わり、多くの人が親しみを持てるシンボル。そこで、このパンダがロゴのモデルとなりました。最初のスケッチを描いたのは、自然保護活動家で画家のジェラルド・ウォーターソン。それを基に、創設者の一人ピーター・スコットが初代ロゴを完成させました。
(出所)"This Adorable Panda Was at the Center of a Cold War Conflict", Mar 15, 2017, TIME

コスト削減に適したパンダ
ただし、パンダの採用理由は知名度や愛らしさだけではありません。
WWFが公式に紹介しているもう一つの理由は、白黒で印刷でき、印刷コストを抑えられることです。目の周りや耳、脚の黒い模様が特徴のパンダなら、色を使わなくても姿を表せます。国際的に資金を募る団体にとって、印刷物に使いやすいことも利点でした。
実際、設立初期の募金では新聞が大きな役割を果たしています。英紙『デイリー・ミラー』がWWFを7ページにわたって取り上げた際には、掲載から1週間で6万ポンドの寄付が集まりました。設立から3年間で募った活動資金は約190万ドルに上り、自然保護事業に充てられています。
パンダのロゴには、国境を越える親しみやすさと、費用を抑えて広められる実用性がありました。どうやらパンダは、自然保護だけでなく、経費節減にも適任だったようです。
(出所) "WWFのロゴのはじまり"