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中国の夏を映す飲み物|酸梅湯

中国の夏を映す飲み物|酸梅湯

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 世界中の国々には、その国らしさを最もよく表す食べ物や飲み物がある。中国において、暑い夏に飲む飲み物の一つ、「酸梅湯(さんめいたん)」はその最たるものだ。酸梅湯は、古くから親しまれてきた中国の伝統的な清涼飲料で、暑さの厳しい季節に冷やして飲まれることが多い。中国では、単なる甘酸っぱい飲み物というだけでなく、夏の暮らしや季節感と結びついた存在として受け止められている。

長い時間の中で育まれた味

 酸梅湯の魅力は、その独特な味わいだけではない。そこには長い歴史もある。梅を使った飲み物の歴史は古く、中国では古くから梅が食用・薬用の両面で用いられてきた。現在の酸梅湯に近い飲み物は、宋代にはすでに存在していたとされ、その後、時代を経る中で少しずつ形を変えながら発展してきた。現代の酸梅湯は、主に烏梅を中心に、山査子、甘草、陳皮、氷砂糖、さらに香りづけとして桂花などを加えて作られることが多い。

 山査子(サンザシ)はバラ科のオオミサンザシなどの成熟した果実を乾燥させたもので、真夏でも食欲の改善、消化促進などの効用がある。甘草(カンゾウ)は、マメ科のウラルカンゾウ、スペインカンゾウの根および根茎を乾燥させたもので、さまざまな生薬の作用を調和させ、毒性を緩和する効用がある。このような材料の組み合わせからも、中国の食文化に見られる「味わい」と「健康」を両立させようとする考え方(医食同源)が感じられる。

梅シロップとの似ているようで違う関係

 日本人にとって、梅を使ったノンアルコール飲料といえば、まず「梅シロップ」を思い浮かべるだろう。梅シロップも、夏に親しまれる爽やかな飲み物である。しかし、酸梅湯と梅シロップは、同じ「梅の飲み物」でありながら、その性格はかなり異なる。梅シロップは一般に青梅と砂糖を使って作られ、材料を瓶に入れてじっくり漬け込むことで、みずみずしく透明感のある甘酸っぱさを引き出す。

 一方、酸梅湯は青梅ではなく、燻して加工した烏梅(未熟な梅の果実を薫製)を使う点が大きな特徴である。さらに、山査子(サンザシ)や甘草(カンゾウ)、陳皮(チンピ、柑橘の果皮を原料とする生薬)などを加えて煮出して作るため、味わいには酸味と甘味だけでなく、ほのかな燻香や草木のような香りが生まれる。つまり、梅シロップが「果実純粋の爽やかさ」を楽しむ飲み物だとすれば、酸梅湯は「複数の素材が重なり合う、複雑的な風味」を味わう飲み物だと言える。

 酸梅湯は日本でも、家庭用に簡単的に作るができる。日本で作る場合は、インターネット通販や漢方薬局で烏梅や山査子を手に入れ、そこに砂糖と少量の陳皮を加えると、比較的手軽に家庭版の酸梅湯を再現できる。作り方はそれほど難しいものではない。


 [作り方]

  1. 烏梅、山査子、少量の陳皮(お好みの柑橘類の皮)、砂糖
  2. 烏梅(丸ごと)、山査子(丸ごと)、陳皮(薄く削ったもの)を軽く洗って15分ほど水に浸す
  3. そのまま鍋で30分ほど煮出す
  4. 砂糖を加えて甘さを調整する

 冷蔵庫でしっかり冷やせば、暑い日にぴったりの一杯になる。また、個人の好みに応じて、洛神花(ラクシンカ・ハイビスカス・ローゼル)、桂花(ケイカ)、レモンなども一緒に使えば、より好みの味に調整できるだろう。なお、すべての材料をそろえられない場合でも、烏梅と砂糖を中心に作れば、酸梅湯らしい雰囲気は十分に感じられる。

 酸梅湯は、一見するとただの伝統飲料に見えるかもしれない。しかし、その一杯の中には、中国の真夏を乗り切るための食文化の知恵が凝縮されている。日本の梅シロップと比べてみることで、その違いはいっそう鮮明になる。似ているようで違う。けれど、どちらにも夏を涼やかに過ごそうとする人々の工夫が込められている。季節とともに生きる文化を感じさせてくれる存在なのである。

楊 濡瑞
楊 濡瑞
ジュニアエコノミスト
上智大学大学院・経済学研究科博士前期課程卒業。経済学修士。2025年より、JTG証券経済調査室で市場調査業務に従事。中国経済や、先進国債券の投資分析などを行う。大学院では、行動ファイナンスの研究を行い、特に株式市場における空売りに与える投資家行動の影響などを定量化した。中国・四川省出身。

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