野生のインコは仲間をどう見分ける?―声でわかる“個体識別”のしくみ

ヨウムのような大型インコは4~5歳の知能があると言われ、人の言葉で簡単な会話ができます。セキセイインコのような小型のインコは、人の言葉をまねることができますが、その意味が全てわかっているか、と言えば一部は理解し、一部は理解していないようにも見えます。それでは、野生のインコはお互いに会話をしているのでしょうか?
他の鳥たちと違って、多くのインコは、大人になってからも新しい声を覚えられる、という点で珍しい特徴を持っている鳥です。しかも、その声は求愛だけでなく、仲間と連絡を取ったり、群れのまとまりを保ったり、集団で生活することが多いインコの社会生活そのものに深く関わっています。では、インコたちは、どうやって新たに迎え入れたインコが「仲間かどうか」を見分けているのでしょうか。
群れで生活する鳥たちは、コンタクトコールという、仲間同士で位置を確認し合い、絆を保つための鳴き声を発しています。そこで、ある学者たちが2020年にオキナインコのコンタクトコールを対象とした研究を行いました。オキナインコは、生活を共にする仲間のグループが固定されず、相手や場面に応じて小さい集団が離れたり集まったりする「離合集散型」の社会生活を営んでいます。もし、学習された声が“群れの会員証”としての役割を持つなら、ペアや群れ、地域といった複数の社会スケールで、近い仲間ほど、コンタクトコールが段階的に似ていくのではないか、研究者は考えました。

ところが実際には、もっとも強く似ていたのは自分自身の声だけで、ペアや群れ、地理的な違いで見られた類似性は、あるにはあってもかなり弱いものでした。つまりオキナインコの社会では、仲間を「どの群れの鳥か」といったグループとしては認識しておらず、「いま鳴いたのは既に会ったことがあるインコ」かどうか、として認識していたのです。オキナインコたちは、こうしたそれぞれの声の個性に、警戒などの異なる意味を持つメッセージを重ね合わせて発声していました。
これが全てのインコで共通なのかというと、実はそうでもありません。より体の小さいセキセイインコでは、メンバー同士が数週間のうちにはっきりと複数の共有コールを作り、しかもこの共有コールを単なる“合言葉”ではなく、グループが特定の相手に向ける“ラベル”として使ったり、つがいでは雄が雌の声に似せることがペアの形成や維持に関わる可能性も報告されていました。それでも、セキセイインコの社会では、群れに合わせた音紋以上に、自分の個体識別の情報をより強く保って鳴いているそうです。

人間が、すべての言葉に自分の名前を織り込んでしゃべっていたら?と思うと、鳥たちもかなり器用なことをしていますね。