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つれづれなるままに

郵便サービスの品質保持にも限界が

郵便サービスの品質保持にも限界が

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1月24日は、郵便制度施行記念日

1871年(明治4年)の1月24日、郵便創業の布告が発せられ、同年3月1日から東京・大阪間に官営事業として実施される郵便制度が始まりました。政治家の前島密(まえじま ひそか、1835~1919年)の建議により始まった郵便ですが、当時の日本の国家財政力では新たな郵便制度を短期間に全国に普及させることは非常に困難でした。そこで、前島密は、各地の名主や資産家などに郵便取扱役という辞令を与え、土地や建物の無償提供を受けることで、郵便取扱所を開設していきました。当時、郵便取扱所と呼ばれた郵便局は、創業の明治4年には179局でしたが、翌年には1159局まで一気に増加しました。これが日本における郵便事業の始まりです。これを記念して1月24日は郵便制度施行記念日と呼ばれています。

それまでの飛脚便との違いは、(i) 国営事業であること、(ii)切手による料金前納であること、(iii) 書状集メ箱(ポスト)の設置を行ったこと、(iv)あて所配達をおこなったこと、(v)全国均一料金(明治6年から実施)だったこと、などがあります。その後、明治10年には、万国郵便連合(UPU)に加盟し、郵便局での外国郵便物の取扱を開始しました。また明治25年からは、小包郵便物の取扱も開始しました。

その後、郵便制度は長年にわたり、日本の経済や社会の発展を支えていきました。

(※)郵便の歴史は総務省資料による。

通信ネットワーク技術の発展と、郵便物の減少

手紙やはがきなどの「信書」の取り扱いは、長年、日本郵便の独占事業であり、今も変わっていません。しかし、近年のIT技術の発展と広がりにより、紙などの郵便物の取り扱い量は急速に減少しています。

(出所) ”郵便事業の現状と今後の見通しについて”, 2024/7 ,日本郵便

取扱量が減ってもポストや配達員の数を減らすことは困難です。この結果、日本の郵便事業では急速な赤字化が進んでいます。2024年度(2025年3月期)には、日本郵政の子会社で郵便事業を営む日本郵便の郵便・物流事業は2期連続となる▲383億円の営業赤字を計上。この結果、営業利益も5年前には1,790億円でしたが、昨年はわずか35億円と、50分の1まで急減していました。

(出所) 令和7年版 通信白書、総務省よりJTG証券で作成

このままでは、今の日本全国均一のユニバーサルサービスである郵便制度を維持することが難しくなりかねません。では、他の国では郵便物の減少に対し、どのように対応しているのでしょうか?

海外の郵便料金と日本の違い

海外旅行の最中などに郵便を送ろうとすると、その郵送料金の高さに驚いたことはないでしょうか。以下で、2019年から2023年にかけてのデータに基づき、他国の郵便事業と日本の郵便事業の経営環境の変化を比較してみます。

(出所) ”郵便事業の現状と今後の見通しについて”, 2024/7 ,日本郵便

どの国でも、郵便物の取扱量は▲16%~▲33%と大きく落ち込んでいます。違うのは郵便料金です。ドイツ以外の国では+20%~+37%ほどのレベルで郵便料金が大きく値上がりしています。こうした中、日本の郵便事業だけが全く値上げをしていませんでした。(ただし、日本の郵便料金も2024年10月1日から値上げ済み。)

それでは、日本と海外では郵便料金の制度はどのように異なるのでしょうか?以下で比較しました。

(出所) ”郵便事業の現状と今後の見通しについて”, 2024/7 ,日本郵便

海外では、物価上昇に連動して、郵便料金をより機動的に値上げできる制度があるのが普通です。しかし、日本では必要に応じて総務省令を変更する必要があり、その際には「国民の負担能力」も考慮されます。消費者にとっては使いやすいですが、郵便事業者にはつらい制度と言えるでしょう。

日本の郵便制度は、配達の正確性や時間の短さなどで、世界でも類を見ない高い水準のサービスを提供しています。しかし、日本もインフレの時代に入る中では、郵便料金がさらに引き上げられないと今の様な質の高いサービスが維持できなくなりそうです。

上田 祐介
上田 祐介
チーフインベストメントストラテジスト
JTG証券経済調査室長 兼 チーフインベストメントストラテジスト。クオンツアナリストとして職歴を開始。その後は複数の大手外資系投資銀行などで主にクレジット市場関連の業務を歴任。海外クレジット市場の分析に強み。

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