今日は何の日(12/12):フランク・シナトラの誕生日
12月12日は、フランク・シナトラの誕生日
今日、12月12日は、その深く語りかけるような歌い回しと歌声から「The Voice」とも呼ばれた偉大な歌手、フランク・シナトラの誕生日です。彼は1915年のこの日に誕生し、移民の子として貧しい家庭から大成功をつかみ、生涯で推定1億5千万枚以上のレコードを売り上げ、まさに“American Dream”を体現しました。フランク・シナトラを押し上げた原動力は、何と言ってもその歌声であり、それまでになかった呼吸・フレージング・語りで、高度な技巧型の歌唱を生み出し魅せた点が革新的でした。
ここで、シナトラのテクニックのいくつかを紹介しましょう。
(1)マイクシンギング
シナトラは、現代の歌手が行う距離・角度・息量の調整を用いて“マイクを楽器化する”技術の先駆者です。高音で声が強くなるときは マイクから距離を取り、息の多い部分では マイクに寄り、“s” “t” などの破裂音や歯擦音を抑える角度でマイクを扱いました。こうした細かな調整により、驚くほど均質で心地よい声が録音されました。
(2)声質(Vocal Timbre)と発声構造
シナトラは、喉奥で響きを作るより、口腔内での前方共鳴を強く使うことで、息の量を最小限に抑えた密度の高いトーンを作り、語りかけるような温かみを保った歌声を出していました。横隔膜の張力を使った「支え」が非常に強いシナトラならではのテクニックで、彼の録音を分析すると、80%以上のフレーズでブレスが聞こえない、といいます。
(3)フレージング(Phrasing)の革新性
シナトラは、曲の旋律よりも 歌詞の意味 を優先してフレーズを再設計しました。例えば、語尾を切りすぎず滑らかに次語へ流し、リズムより語感を優先して「後拍」や「 後掛けヴィブラート」、伴奏より わずかに後ろに落とす「後ノリ」を多用しました。また、ビート上に正確に乗る代わりに前後に「泳がせ」ながらも伴奏とは完全に同期させることで、大人の余裕を伴った、流れるようなスウィング感や物語性のある歌唱を披露しました。
現在ではリズム重視の楽曲が多いですが、歌うよりも語ることでニュアンスを精密に伝えたシナトラの“語り芸”は、今の時代に聴くとかえって新鮮かもしれませんね。
