「相互関税」違法判決の政策・市場への影響は?
本レポートでは、トランプ大統領が進めたIEEPA関税を違法とする司法判断の背景と、今後の米国政治・経済・金融相場への影響について考察する。
これまでのIEEPA課税、訴訟、違法判決までの経緯
- 2025年に、トランプ大統領は、IEEPA(国際緊急経済権限法)に基づく2種類の課税(薬物流入関連関税と相互関税)を適用。しかし、2026年2月20日に米連邦最高裁が、IEEPAに基づく課税を違法と判断。同日の大統領令により、同法に基づく課税は即時停止。
最高裁判決を受けた新たな課税措置
- トランプ政権は、通商法122条に基づく代替の課税(セーフガード措置)を2026年2月24日より開始。課税率は10%で、150日間有効。
- さらに、同課税が満了する2026年7月24日までに、通商法301条(いわゆるスーパー301条)に基づく代替課税を開始する方針を示す。
232条関税(鉄・アルミ・自動車)への波及可能性と潜在影響
- 鉄・アルミ、自動車に課されている232条関税に対する直接的な法的影響は、基本的に生じない。ただし、232条関税の影響が厳しい自動車の消費減は継続しやすい。
最高裁判決の要旨と法的論点
- 米最高裁が、CIT(国際貿易裁判所)の判断を重視する姿勢を示したことは、今回違法判断がなされたIEEPA課税額の返金可能性に対し、重要な意味を持つ。
IEEPA税収の返還リスク
- 次の司法上の争点は、違法なIEEPA課税の返還方法。国際貿易裁判所(CIT)では、過去に違法関税の返還スキームを確立済み。最高裁もCITの判断を支持しやすい。
- 民主党では関税の返還を法定期限付きで義務づける法案を提出し“政策争点化”。
OBBB法に基づく財政構造の維持
- 違法判決は米国財政の不安定要因。2025年7月成立のOBBB法により、米国の法人・個人は減税済み。関税は減税による歳入減を補う重要な税源。
- 今回の違法判決で、財政赤字は拡大しやすく、国債への依存度も高まりやすい。
IEEPA関税への違法判決の影響に関するまとめ
- 新関税の適用は、短期的には平均課税率の低下による物価上昇率の抑制により政策金利の利下げ圧力となる一方、財政面の手当ては遅れやすく、米国債の増発圧力は超長期金利への上昇圧力になりやすい。イールドカーブはスティープ化(傾きが急に)しやすい。