AT1証券のベイルイン・トリガーの解説(2) -米国AT1証券のベイルイン制度・リスク-
本レポートでは、米国におけるAT1証券のベイルインに関連した規制上の評価点や、制度に関連した税務リスクなどについて解説する。
米国AT1証券のベイルイン関連規制
- 米国のAT1証券などを用いた損失吸収は、すべて法定(statutory)アプローチ。
- 米銀の破綻認定時には、連邦預金保険公社(FDIC)のレシーバー(管財人)シップ制度によって、破綻銀行の持株会社を法的に破綻、 FDICが管財人として既存規制資本(優先株や劣後債)の価値を減損させ、その後に公的資金を注入する制度設計。
- 米銀のAT1証券には、目論見書に契約条項としてのベイルイン規定は記載されない(法定アプローチに関する注意喚起文言は掲載)。
- 米銀AT1証券の定性(PONV)トリガーは、契約条項ではなく、法定の破綻処理枠組みに委ねられている。
- 米銀のAT1証券は、破綻処理開始(=PONV到来)時には他の株主資本とともに法定の順序で全額消滅するか損失吸収。
- 米銀に対する破綻前の公的資金注入の可能性:現在、恒久的な支援制度はなく、米国の金融機関には破綻前の予防的な公的資金注入を期待できない。
米銀AT1証券に特有の税務リスク
- 米銀のAT1証券は、優先株式として発行
- 国内の個人投資家が米国のAT1証券に投資する場合には、「上場廃止リスク」が「税務悪化リスク」に直結し、問題となる可能性。
- 上場株式 :申告分離課税、損益通算可、税率で有利
- 非上場株式 :総合課税、通算制限、税務コスト高