米ドル建て債券市場動向 週次 2025年6月27日から7月4日まで
本レポートは、6月27日から7月4日までの米国債券市場動向の状況を示すことを目的とする。(起債額と取引額は6月30日~7月4日まで)
まとめ
- トランプ大統領による相互関税の適用開始を前に、相場は落ち着いた動きに留まった。また、伝統的に7月、8月は新規起債額が減り、流通市場における債券の流動性も減りやすい季節でもある。
- 8月1日以降とされる相互関税の適用を前に、EUを含む各国の対米交渉動向が当面の相場の変動要因になりやすいものの、こうした短期的な要因による長期債の変動幅は限定的とみる。 課税方針が確定し経済指標への影響が確認されない中では、7月末のFOMCも利下げは見送りとなりやすい。日銀の利上げも難しい状況だ。
- よって、ドル円レートも円安圧力が維持される中での、140円台後半のボックス圏に留まりやすいだろう。
- 超長期債の投資は引き続き有効か。
米ドル建て債券価格動向
- 米国債相場は、引き続き、超長期の利回りはより安定。 短期の利回りは、トランプ氏の特定国別関税通知が迫るとの発言を受けインフレ率上昇懸念から上昇。
- 社債スプレッドは投資適格で顕著に低下。投機級も低下。信用リスク増減というより、国債金利の反転についていけていない状況 。
- 米国籍事業法人の投資適格債で、最も上昇したのは前週に続いて自動車セクターのフォード・モータ-・クレジット。トランプ大統領は、数日中にも複数国に特定国向け関税の通知書簡を送付する方針を示し、8/1から米国に関税が入る、と言及していることを受け、既に部品課税の緩和措置が導入されたカナダ・メキシコからの輸入が多いフォードとGMの社債にはプラス材料と認識、社債価格が上昇した。
- 米国籍事業法人の投資適格債で、最も時価が下落したのは管理医療セクターのセンティーン。センティーンは公的保険のACA(オバマケア)に傾斜したビジネスを行っている。今回のOBBBの採決において、連邦議会がMedicaidについて当初案より削減圧力を後退させ極端な制度改変を断念したのに対し、ACA市場についてはむしろ厳格化・補助縮小の圧力が続いていることが失望され、債券が売られた。
米ドル建て債券起債動向
- 前週に優先債で起債額の特に大きかった案件は、6月30日に発行した通信セクターの「Warnermedia Holdings Inc」の108.3億ドルの起債。債券の本数は6本、年限は1~26年。Warner Bros Discoveryの分割に向け戦略的に実施された起債案件。
- 劣後債で一番起債額の大きかった案件は、7月2日に発行した生命保険業セクターの「RLGH Finance Bermuda Ltd」の7.5億ドル。6.75%クーポンで法定年限は10年。前週も、引き続き、米国籍企業の劣後起債はなく、また事業劣後債の起債もなかった。
米ドル建て債券取引動向
- 最も債券の取引額が多かった金融機関は「JPモルガン・チェース・アンド・カンパニー」で、「バンク・オブ・アメリカ」がそれに続く形。
- 事業会社のうち、投資適格債券では「メキシコ石油公社(ペメックス)」が最も多く、「ユナイテッドヘルス・グループ」、「オラクル」がそれに続く形がそれに続く形。