トランプ大統領の相互関税が目指す経済政策
本レポートでは、米トランプ大統領の一連の関税政策が目指す、同大統領の経済政策の目的と今後の市場への影響について解説する。
相互関税による米国内での政策目標とは?
- 短期の政策目標:外国から徴収した関税をアメリカ国民個人への給付・還付の原資に。
- 中期的目標:産業構造の転換と米国での生産への回帰。 短期目標の達成には、原資としての関税の積み上げが不可欠。トランプ政権が2026年11月の中間選挙で勝利するためにも必須。
米国の政策目標の実現性は?
- 短期の政策目標(関税による給付・還付)は実現可能。一方で、国内での製造業の生産に向けた産業振興策は、中長期的な視点では一定の成果を上げる可能性は高いものの、短期的には多くの課題を抱えており進展しにくい。
米国の政策目標の実現性は?
- 諸外国からアメリカに交渉を持ち掛けても、短期的にこれを受け入れる可能性は限定的。もし強固な対抗措置を実施すれば相互に課税強化を行い、貿易戦争に進む以外の方向性はなくなりやすい。その場合、経済的なダメージを受けやすいのは、アメリカよりも諸外国。特に、欧州(EU、特にドイツなど)、カナダ、メキシコは、貿易戦争による景気悪化リスクに脆弱。
不透明な市場環境下での投資戦略
- 米国では、インフレ懸念が高まる中での低金利誘導は生じにくく、ドル安も短期的には進展しにくい。よって米ドル建て資産への投資は、引き続き有効。
- 成長鈍化の中で「直利」を重視した投資が有効(現金の下落はない)。
- 株式では米ドル建ての高配当のバリュー株で安定業種の銘柄(景気連動を除く)。
- 債券では、金利上昇懸念は抑制的なことから米ドル建て債でデュレーションの長期化が有効。事業会社債は、安定業種重視。金融劣後債は有効な直利の積み上げ手段に。一方、事業ハイイールド債、低格付ソブリン債などは当面はさらなる時価下落を想定。下落後に再検討か。