【ショート】ベッセント長官の円高誘導と長期金利抑制は成功する?
ベッセント財務長官による円高誘導は持続するのか
米国のベッセント財務長官は、米国内では財務省によるツイストオペを通じて長期金利の上昇を抑えようとする一方、日本に対しては円高方向への誘導を強めている。為替介入によって円高を促しただけではなく、日本銀行に対しても利上げを求める圧力をかけ、さらに円高方向への口先介入を続けている。
ベッセント財務長官は、ドル/円相場を円高方向へ誘導するうえで、自らが「賭けの胴元」であり、日本の金融政策を事前に知っているとまで発言している。なぜ、ここまで積極的ともいえる円高誘導を行うのか。その背景を考えるうえで重要なのが、現在の米国で急速に拡大している成長投資と、そのために必要となる資金である。
米国の成長投資を支える追加資金
米国では現在、成長投資が急激に拡大している。しかし、この投資拡大は単純にキャッシュフローが増えたことだけによって支えられているわけではない。財務レバレッジ、すなわち借金を膨らませることによって成長を支えている側面が強くなっている。
この状況では、追加の資金を継続的に確保しなければ、現在の成長を維持することが難しくなる。そこで重要になってくるのが、日本からの資金である。
ベッセント財務長官の政策は、非常に市場寄りであり、米国に資金を集める能力には長けている。一方で、その資金を米国経済の構造的な強靱化につなげていくことができるのかについては、未知数な部分も残る。現在の政策だけを見れば、必ずしも長期的な持続性があるとは言い切れないという問題がある。
日米戦略投資を加速する「Investment Accelerator」
ここで重要になるのが、日米戦略投資の加速である。すでに第1弾、第2弾の案件は約定済みであるが、それでも総額5,500億ドルの約2割にすぎない。
米国政府は、この投資をさらに加速するため、「Investment Accelerator」という新たな組織を設けようとしている。日本企業に対しては、1件10億ドル以上となる米国内への大型投資を積極的に推進したい考えである。
この日米戦略投資を進めることが、ベッセント財務長官による円高誘導の狙いの一つであると考えられる。米国は、日本から米国内への投資をさらに増やし、米国で必要となる資金を確保しようとしているのである。
財務省ツイストオペには市場の失望も
その一方で、米国企業がより容易に資金を借り入れられるようにすることを目的として進められたのが、財務省によるツイストオペである。
しかし、実際に示された金額規模は市場が期待していたものよりも小さかった。このため、市場では失望売りが広がり、本来は上昇を抑えることを狙っていた長期金利が、逆に上昇する結果となった。
つまり、ベッセント財務長官が進めている政策が、常に想定通りの市場反応を引き出しているわけではない。政策を打ち出しても、その規模が市場の期待に届かなければ、逆方向への動きが生じることもある。
円高も一方通行ではない
為替市場でも同様の動きが確認できる。ベッセント財務長官の一連の発言を受け、ドル/円相場は急激に円高方向へ進んだ。
しかし、その後はこうした政策への期待が一旦剥落し、円高の流れも反転した。ドル/円は再びやや円安方向に戻した状態となっている。ベッセント財務長官の発言によって急速に進んだ円高であっても、その期待が後退すれば相場は反対方向へ動くことになる。
9月18日の日銀政策決定会合が焦点
今後の大きな焦点となるのが、9月18日の日銀金融政策決定会合である。
ここで0.25%程度の利上げが行われた場合、これまで市場で形成されてきた円高期待が剥落する可能性がある。日銀の利上げ期待が円高を支えてきたのであれば、実際に利上げが行われた段階で、その期待が一旦後退する可能性があるためである。
足元のドル/円相場は152円から155円程度のレンジで推移している。これは少し前までの160円前後と比較すれば、米ドル建て債への投資を考えるうえでは、為替面で一時的に良好なタイミングとなっている。
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