【ショート】重大な転換点を迎えた中東情勢とエネルギー問題
中東情勢が新たな局面を迎えている。7月末頃まで大規模な軍事攻撃を行ってきた米国は、迎撃兵器の減少などを背景に、直近では攻撃を停止している。一方、イランは湾岸国の民間船舶や民間施設に対しても強硬な姿勢を維持しており、緊張が解消したとは言い難い。むしろ現在の最大の変化は、軍事衝突の影響が海上輸送と世界のエネルギー供給へ広がり始めたことである。
ホルムズ海峡から紅海へ広がる輸送リスク
これまで大きな焦点となってきたのは、ペルシャ湾の出口に位置するホルムズ海峡であった。ところが、イランに近いイエメンのフーシ派が海上封鎖を宣言し、紅海の南側出口に当たるバブ・エル・マンデブ海峡でもミサイル攻撃を実施したことで状況が変化した。
サウジアラビアから見れば、東側のホルムズ海峡に加え、西側の紅海航路も不安定化したことになる。イラン側にとっては、世界のエネルギー供給を絞ることで世界経済への影響力を高め、交渉力を維持する狙いがあると考えられる。
タンカー通航量にも表れる異変
実際、海上輸送には大きな変化が表れている。ホルムズ海峡では、一時期を除いて米イラン戦争の開戦以来、タンカー通航数がゼロ近傍で推移している。また、バブ・エル・マンデブ海峡でも7月末以降、タンカー通航数が急減している。
さらに重要なのが、アジアへの原油輸送ルートであるマラッカ海峡である。7月初頭までは予防的な輸送増加によってタンカー通航数が積み上がっていたが、その後はバブ・エル・マンデブ海峡の緊迫化などを背景に急減傾向を示している。こうした動きもあり、OECD加盟国の石油在庫も足元で低い水準となっている。
エネルギー問題は世界の供給網へ波及する
問題は原油価格だけではない。アジアでエネルギー供給が滞れば、その影響は製造業のサプライチェーンを通じて世界へ広がる可能性がある。
例えば自動車は、一つの部品が不足するだけでも完成品を生産できない。電子機器でも同様であり、フィリピンのように輸入部品を使って製品を組み立て、輸出する国では、エネルギーや物流の停滞がそのまま生産・輸出の減少につながり得る。
中東情勢は、単なる地域紛争の問題ではなくなりつつある。ホルムズ海峡と紅海という二つの重要航路が同時に不安定化すれば、エネルギー供給、アジアの生産活動、さらには世界経済の成長ペースにまで影響が及ぶ可能性がある。今後は軍事情勢だけでなく、タンカー通航量や石油在庫の変化にも注意する必要がある。
金融商品への投資には価格変動のリスクを含む元本割れのリスクが存在します。投資判断は、利用者ご自身の判断と責任において行っていただくようお願いいたします。
本サイトに掲載された情報は、信頼できると判断した情報源に基づいておりますが、その正確性、完全性、最新性を保証するものではありません。
本サイトの情報に基づいて行われた投資行動により生じたいかなる損害についても、当社は一切の責任を負いかねます。
本サイトに掲載されている文章、画像、データ等の著作物は、当社または正当な権利者に帰属します。無断転載・複製を禁じます。
Jトラストグローバル証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第35号
加入協会:日本証券業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、一般社団法人資産運用業協会、日本貸金業協会会員 第006278号