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ポートフォリオ運用 | 基礎

【動画】混迷期の退職世代の資産運用

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デフレからインフレへ、資産運用の前提は変わった

  • 日本では長らく、バブル崩壊後のデフレ環境が続いてきた。物価が下がる、あるいはほとんど上がらない時代には、現金や預金の名目額を減らさないこと自体に大きな意味があった。
  • しかし、2021年以降、日本は明確にインフレ型の社会へ移行した。物価が上昇する局面では、同じ金額を保有していても購入できる財やサービスの量は減少する。つまり、資産運用の目的は「元本を減らさないこと」から、「購買力を維持し、可能であれば増やすこと」へ変化したのである。

退職世代ほど購買力低下の影響を受けやすい

  • 日本の物価上昇率は年率で見ると2%前後に見えることがある。しかし、過去5年間の累積では約13%上昇しており、食料品や電力料金は約3割、宿泊費やパック旅行費はさらに大きく上昇した。
  • 仮に3,000万円を低金利の銀行預金に置き、残高がほとんど増えなかった場合、名目額は維持されても、実際に購入できるものは減っている。現金の金額が変わらないことと、資産価値が維持されることは同じではない。
  • 特に退職世代は、現役世代のように賃金上昇によってインフレの影響を吸収しにくい。運用期間が今後20年に及ぶのであれば、数年間の物価上昇を一時的な現象とみなすべきではない。老後資産の管理では、残高ではなく、その資産が将来どれだけの生活を支えられるかという視点が重要である。

日本型インフレの背景にある円の購買力低下

  • 現在の物価上昇には、原油価格や地政学、国内政策などの短期的要因も影響する。ただし、より長期的に見れば、円安と日本経済の相対的な成長力低下が重要である。
  • 世界では人口増加や資源・農産物への需要拡大を背景に物価が上昇してきた一方、日本は少子高齢化と低成長の下で取り残されてきた。その結果、海外から輸入する資源や製品の価格上昇に、円安による負担が加わる構造となっている。
  • 需要拡大、賃金上昇、所得増加を伴うインフレであれば、家計の負担は一定程度吸収される。しかし、輸入価格の上昇や通貨安を主因とし、経済成長や賃金が十分に伸びないインフレは、生活水準を直接圧迫する。日本で観測されてきたのは、後者の性格が強いインフレである。

日米の成長格差が資産価値を左右する

  • 2006年から2026年までの20年間で、日本の経済成長は累積約11%にとどまった一方、米国は約50%成長したとされる。経済成長力に大きな差があれば、長期的には通貨や資産価格の評価にも差が生じやすい。
  • 円安は一時的な国内政策だけで説明できるものではなく、日本と米国をはじめとする海外経済との成長格差が積み重なった結果として捉える必要がある。
  • この観点からは、退職世代の資産を円預金だけで保有することは、日本経済と円の購買力に資産全体を集中させることを意味する。生活費として必要な円資金を確保しつつ、相対的に成長力の高い経済圏の資産を組み入れることが、購買力を守る選択肢となる。

二つの将来像から資産配分を考える

  • 今後、日本の人口減少が抑えられ、生産性が改善し、AIなどを通じて米国に近い成長を実現できると考えるのであれば、日本株をはじめとする円資産への配分には合理性がある。
  • 一方、少子高齢化や低成長が続き、海外との所得・成長格差がさらに拡大すると考えるのであれば、ドル建て資産など、より強い経済を基盤とする資産を組み入れる必要性は高まる。
  • 重要なのは、円かドルかを単純な二者択一で考えることではない。日常生活を支える円の流動性と、長期的な購買力を補完する海外資産を、それぞれの役割に応じて組み合わせることである。
  • 退職世代の運用では、高い収益を追求すること以上に、インフレと通貨価値の変化に耐えられる資産構成が求められる。これまで安全と考えられてきた現金・預金も、インフレ下では購買力を失うリスクを持つ。老後資産を守るためには、名目上の元本だけでなく、将来の生活水準を維持できるかという実質的な視点が不可欠である。
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上田 祐介
上田 祐介
チーフインベストメントストラテジスト
JTG証券経済調査室長 兼 チーフインベストメントストラテジスト。クオンツアナリストとして職歴を開始。その後は複数の大手外資系投資銀行などで主にクレジット市場関連の業務を歴任。海外クレジット市場の分析に強み。

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