債券Q&A(IV-2)|アセット・アロケーションは本当に有効?

長期の資産運用では、株式や債券のインデックス投信などを組み合わせるアセット・アロケーション(分散投資)が広く用いられています。値動きの異なる資産を保有することで、資産全体の値動きを抑えることが狙いです。特に、株式が下がると債券が上がる「逆相関」の関係では、損失を補い合う効果が期待できます。
しかし、この関係はいつも成り立つわけではありません。以下の図表では分散投資が有効となる前提となる、逆相関が維持されているのか、確認してみました。
アメリカ市場の株式と債券の12か月移動平均収益率、相関
まず、長期間のリターンに基づき、株式と債券の収益率を確認してみました。
アメリカ市場では、2021年頃までは株式と債券に分散投資を行いますと、どちらかが下がったときにもう片側の資産が上がっていたため(逆相関)、投資リスクが低下し分散投資が有効であったように見えます。しかし、下図のリターンを見ると、アメリカでは2021年頃から、株式と債券が同じ方向に動いている局面が多いように見えます。

出所:Bloombergデータより、JTG証券で作成
この連動性を統計的に確かめたのが「相関係数」です。株式と債券のリターンが逆に動くときには、相関係数が負(マイナス)の値を取ります。逆に、同時にリターンが上昇したり低下する時には、相関係数はプラスの値となります。アメリカでは、2021年以降、「正の相関」が目立つようになりました。このことは、アロケーションによるリスク低減効果も薄まっていることを意味します。

出所:Bloombergデータより、JTG証券で作成
日本市場の株式と債券の12か月移動平均収益率、相関
次に、日本市場の状況を確認します。日本市場でも、2022年頃から正の相関が強まりましたが、その後は逆相関に戻る期間もあり、両者の関係は変化しています。これらの図表の通り、日本市場では伝統的なアロケーションが、アメリカに比べると今でも機能しやすい傾向を示している、と言えるでしょう。

出所:Bloombergデータより、JTG証券で作成

出所:Bloombergデータより、JTG証券で作成
逆相関が減り連動性が高まった背景の一つは、中央銀行の資産規模が非常に拡大したことが挙げられます。中央銀行の国債保有額などが非常に大きくなった状況では、過去に比べインフレと金融政策の関係が、金融市場に与える影響も非常に大きくなりました。物価が安定しているときは、景気悪化で株価が下がっても、利下げへの期待から債券価格が上がることがあります。一方、インフレが強いと、景気が弱くても中央銀行は利下げしにくくなります。むしろ利上げが意識されれば、既存の債券価格が下がるとともに、企業の借入負担や株価評価にも悪影響が及び、株式と債券が同時に下落しやすくなります。
正の相関になっただけで分散投資が無意味になるわけではありません。値動きが完全に一致しなければ分散効果は残りますが、互いの損失を補う力は弱まります。大切なのは、過去の関係が続くと決めつけず、金利や為替などの共通するリスクが資産全体にどれだけあるかを確認することです。長期保有を前提としても、資産の組み合わせや配分を定期的に点検する必要があります。