債券Q&A(III-7)|信用スプレッドはどう決まる?

信用力が低く低格付の企業は、信用力が高く高格付の企業よりも、社債の信用スプレッドが大きく利回りが高くなります。この信用スプレッドはどのように決まるのでしょうか。
最も簡単な考え方は、1期間のデフォルト確率と、デフォルト時の損失率を用いたものとなります。
債券Aと債券Bを比べると、デフォルト率が2倍ある債券Bでは期待損失も2倍になっています。しかし、債券Aと債券Dを比べるとデフォルト率が2倍の債券Dでも、デフォルト時の損失が半分であれば期待損失は同じになります。

このように、クレジット債の運用を行う場合には、デフォルト率と同様に、デフォルト時の損失率についても考慮しておくことが必要です。
ここで過去の例を見てみます。
2022年のロシアによるウクライナ侵攻におけるロシア・ウクライナ国債の例
2022年のロシアによるウクライナ侵攻においては、欧米主要国ではロシアに対してさまざまな金融制裁を実施し欧米通貨立ての利払いが不可能となり、結果としてロシア・ウクライナ両国の国債がデフォルトと認定され、清算価値を明らかにするためのオークションが実施されました。
この時、西側諸国では、ロシア国債が事実上取引できなくなった一方で、中国やアフリカなど西側規制とは異なるルールで動いている国では、ロシアとの金融取引が可能だったため利払いが継続されていました。そのため、ウクライナ国債の清算価値は額面の17.875%だったのに対し、ロシア国債の清算価値は額面の56.125%と大きく異なる結果となりました。
このため、仮に額面100の債券を20や30で買っていた場合に、ウクライナ国債では損が生じたとしても、ロシア国債では清算価値が高いため逆に利益が出るといった違いが生じました。

因みに、格付会社のルールの一部には債券の種類などから機械的にノッチ差を付ける場合も存在しますが、こうした格付のノッチ差は清算価値の差を適切に反映して評価をしたものではありません。
また、2023年の3月には、クレディスイスグループの永久劣後債(AT1債)が、スイスの監督当局の判断により全額償却(ベイルイン)され、清算価値が0円となりました。このように、商品の特性によって、デフォルト時の損失率には大きな差が出るため、社債の利回りやスプレッドが適正であるかどうかを考える場合には、デフォルト率とデフォルト時損失率の双方に基づいた投資評価が必要となります。