債券Q&A(III-5)|信用格付が同じならリスクも同じ?

信用格付が同じでも、必ずしも同等の信用リスクを表しているとは限りません。実際には、さまざまな理由で同じ格付でも全く異なる信用リスクが生じてしまう場合があります。
このため、信用格付だけを見てクレジット債投資の是非を判断するのではなく、市場環境や債券の利回り・信用スプレッドを加味した総合的な投資評価を行う必要があります。
中でもクレジット・サイクルと呼ばれる市場全体での信用リスクの増減については、十分に配慮しておく必要があります。
時期による信用リスクの差異
市場全体が平常時から危機的状況に陥ったとしても、その前後で信用格付は見直されないケースがこれまでも観測されています。信用格付はあくまで銘柄間の相対的な信用リスクを表していることが多く、絶対的な信用リスクを表しているわけではないからです。
このため、大規模な金融危機の前後では観測した年により、同じ信用格付に対し実際に観測されるデフォルト率が大きく異なることがあります。
例として下図の表の年次デフォルト率(S&P)の推移を見てみますと、リーマンショック(2008-2009)の前後ではデフォルト率に10倍以上の差が生じていたことがわかります。

また、信用リスクは10~20年毎に高まることがあります。こうした周期的に生じるデフォルトリスクの増減を「クレジット・サイクル」と呼びます。
地域による信用リスクの差異
同じ格付機関による同一の格付であっても、地域によってデフォルト発生率が大きく異なることがあります。
例として、下図はS&P格付における同一格付の日本事業会社と米国事業会社のデフォルト発生率を比較しました。

出所:"Default, Transition, and Recovery: 2025 Annual U.S. Corporate Default And Rating Transition Study", 2026/6/12, S&P, "Default, Transition, and Recovery: 2025 Annual Japanese Corporate And Public Finance Default And Rating Transition Study", 2026/3/24, S&P
同図が示す通り、同一格付では明らかに米国事業会社のデフォルト率の方が日本事業会社に比べて高く、相対的に日本事業会社の方が厳しめに評価されている傾向が観測できます。
このようにS&Pなどの外資系格付機関の実績平均デフォルト率を指標とすれば、日本企業向け格付では相対的に低く(格付の過小評価)、米国企業への格付では相対的に高く(格付の過大評価)になりやすい傾向があります。
