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教えて!JTG ( 債券入門 / Q&A ) | I. 債券とは

債券Q&A(I-13)|債券の取引価格はどう決まる?

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債券は「取引所」ではなく、証券会社同士の市場で流通する

株式の多くは取引所に注文が集まり、その時点の市場価格で売買されます。一方、外国債券を含む多くの債券は、証券会社や銀行などが相対で売買する「店頭取引(OTC取引)」が中心です。

図の一番左側にあるのが、ニューヨークやロンドンなどの海外市場です。ここでは米系証券会社や欧州系証券会社、銀行などの金融機関が、数百万ドル、数千万ドルといった大きな単位で債券を売買しています。これが債券市場の中心的な流通市場です。

例えば「事業債A」という債券についても、取引所に一つの価格が表示されているわけではありません。複数の証券会社がそれぞれ、「この価格なら買う」「この価格なら売る」という価格を提示しながら取引しているのです。

海外市場から国内証券会社へ債券が入ってくる

日本の証券会社が個人投資家に外国債券を販売する場合、こうした海外の証券会社などから債券を仕入れます。

例えば国内証券会社が顧客から100万ドルの買付注文を受け、ほぼ同じ金額を海外市場からすぐに調達できるのであれば、証券会社は顧客への販売と市場からの仕入れをほぼ同時に行うことができます。この場合、証券会社が債券を長期間保有する必要はなく、在庫リスクは比較的小さくなります。

一方、顧客の注文が20万ドル、1万ドルといった小口になると事情が異なります。

海外の金融機関同士の市場では、ある程度まとまった金額で取引されることが一般的です。そのため、国内証券会社が海外からまとまった金額を仕入れ、それを20万ドル、10万ドル、1万ドルなどに分けて複数の顧客へ販売するケースが出てきます。

また、ある国内証券会社が保有している債券を、別の国内証券会社が仕入れて顧客に販売することもあります。このように、債券は海外市場から国内市場へ入り、さらに小口化されながら個人投資家まで届いていくのです。

小口になるほど証券会社の「在庫」が発生しやすい

ここで重要になるのが、証券会社が債券を保有する在庫リスクです。

例えば証券会社が20万ドル分の債券を仕入れたものの、顧客から10万ドル分しか注文が入らなければ、残り10万ドルは証券会社自身が保有することになります。

その後、市場金利が上昇して債券価格が下落すれば、証券会社は損失を被る可能性があり、また、信用力の変化や市場環境の悪化によって、当初想定していた価格で売却できなくなることもあります。

一般に、

大口で市場から直接調達できる取引
→ 在庫リスクが小さい
→ 取引コストも小さくなりやすい

のに対して、

小口で証券会社が在庫を持つ必要がある取引
→ 在庫リスクが大きい
→ 取引コストも大きくなりやすい

という関係があります。

個人投資家に提示される価格はどのように決まるのか

店頭取引では、証券会社は通常、二つの価格を持っています。

  • Offer(オファー、売値)は、証券会社が投資家に債券を販売する価格
  • Bid(ビッド、買値)は、証券会社が投資家から債券を買い取る価格

通常は、

Offer価格 > Bid価格

となり、この二つの価格の差をBid-Offer Spread(売買スプレッド)といいます。

株式のように「市場価格+一定額の手数料」という形ではなく、債券の店頭取引では、このBidとOfferの差の中に、証券会社の取引コストや在庫リスク、ヘッジコストなどが含まれていることが多いのです。

したがって、債券の取引コストは単純に一定ではありません。

取引コストを大きく左右するのが「流動性」

同じ債券であっても、取引コストは市場環境によって変化します。

頻繁に売買されている債券で、多くの金融機関が売買価格を提示している場合には、証券会社も容易に仕入れたり売却したりできます。このような債券は流動性が高いため、BidとOfferの差は比較的小さくなりやすいです。

反対に、取引が少ない債券や、小口の債券、発行から時間が経過した債券などでは、買い手や売り手を見つけることが難しくなるため、証券会社が在庫を抱える可能性も高まり、BidとOfferの差も大きくなりやすいです。

つまり、

流動性が高い
→ 売買しやすい
→ 在庫リスクが小さい
→ Bid-Offer Spreadが小さい

流動性が低い
→ 売買しにくい
→ 在庫リスクが大きい
→ Bid-Offer Spreadが大きい

という関係にあるのです。

なぜ債券は「一物一価」ではないのか

このため、債券には株式の取引所価格のような、すべての投資家に共通する一つの価格が存在するとは限りません。

同じ「事業債A」であっても、

  • どの証券会社から購入するか
  • 何ドル購入するか
  • その証券会社が債券を在庫として保有しているか
  • 海外市場からすぐ調達できるか
  • その時点の市場の流動性が高いか
  • 市場金利や信用スプレッドがどの程度変動しているか

などによって、提示される価格は異なります。

したがって、債券価格を見る際には、単に「この債券はいくらか」だけではなく、「どの市場で、どの証券会社が、どの金額について提示している価格なのか」を見る必要があります。

債券の店頭価格とは、ニューヨークやロンドンを中心とする大口の金融機関市場の価格を出発点として、国内証券会社の仕入れ方法、取引金額、在庫リスク、流動性などを反映して形成された価格なのです。

上田 祐介
上田 祐介
チーフインベストメントストラテジスト
JTG証券経済調査室長 兼 チーフインベストメントストラテジスト。クオンツアナリストとして職歴を開始。その後は複数の大手外資系投資銀行などで主にクレジット市場関連の業務を歴任。海外クレジット市場の分析に強み。

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