クレディ・アグリコル・アシュアランスによるRT1 債発行の背景とは?
クレディ・アグリコル・アシュアランス(以下CAA)は、2025年3月10日に同社で初となるRestricted Tier1(RT1)債の発行を発表。本レポートでは、なぜ今CAAがRT1債の発行を開始したのか、その背景について確認する。
CAAと他の欧州主要保険会社のSCR比率
- CAAの規制資本比率に相当するSCR比率は201%(最低要件の2倍以上)と十分に頑健な水準を維持、他の欧州保険大手とも遜色ない状況。
- 今回の新規起債は資本不足に起因するものではない。
CAAによるRT1債発行の背景
- 欧州保険会社が相次いでRT1債を起債する理由は、ソルベンシー2規制導入時に設けられた経過措置が2025年で終わることに起因。
- CAA以外のAXAやNNグループなどの欧州保険大手でも相次いでRT1債を起債。
- 2025年は、規制要因でRT1債の起債が増えやすいタイミング。
RT1債に関連した投資機会
- 監督規制の移行時には、裁定投資機会が生じやすい。 (i) 旧規制商品 アンダーパーで入手できれば、短期間でコールがかかりやすい。ただし、入手が困難。 (ii) 新規制対応RT1債 初起債時には、その後に発行される商品よりもスプレッド(リスクプレミアム)が乗りやすい。
格付会社による欧州銀行AT1債とのリスク認識の違い
- S&Pなどの格付機関では、欧州保険会社のRT1債には、銀行のAT1債よりも相対的に小さいノッチ差(3ノッチ程度)を付与。
- 保険会社の潜在ベイルイン・リスクが短期的に顕在化する可能性について、欧州銀行AT1債(通常5~6ノッチ差)より、低いと評価する格付機関のスタンスを反映。