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今日は何の日(12/19):ザッハトルテの生みの親 フランツ・ザッハーの誕生日

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12月19日は、フランツ・ザッハーの誕生日

1816年の12月19日、オーストリアの著名な料理人であるフランツ・ザッハーがウィーンで誕生しました。彼は、今も世界中で食べられている有名なチョコレート・ケーキであるザッハトルテを考案したことで、その名が良く知られています。

ザッハトルテ誕生の経緯

伝承によれば、フランツ・ザッハーは、14歳でメッテルニヒ公の邸宅で料理人見習いとして修業を始めました。メッテルニヒ公はナポレオン戦争時代にはオーストリアの外交指導者として名をはせ、ウィーン会議では「ヨーロッパの御者」とも呼ばれるほどに外交分野で活躍しました。しかし、1820年代半ば以降になると政治的影響力を失い隠遁生活に入ることとなりました。このため、フランツも同家の料理人見習いになれたのかもしれません。

フランツが、16歳になった1832年、メッテルニヒ公が客のために特別なデザートを注文したのですが、その日にシェフが病に倒れたため、やむを得ず見習いだったフランツが、最初のザッハトルテを焼いたのが、このお菓子が生まれた経緯だと言われています。ただし、現在のザッハトルテと最初のザッハトルテとでは調理法にも違いがあったと言われています。

今も残るザッハトルテは、ザッハーが1840年代のハンガリーでの活動中に彼の名前を冠したケーキを作ったレシピが引き継がれている可能性が高く、この時から特別なかき混ぜ技法によってケーキアイシング(「コンチング」)に必要なクリーミーな食感を与えることが可能になった、と研究者は指摘しています。ですから、初めて作ったときのザッハトルテはもう少し固い食感のものだった可能性があります。

ザッハトルテはどんな菓子?

ザッハトルテ(Sachertorte)は、表面に温めたアプリコットジャム(アプリコット)を塗り、チョコレートグレーズで覆ったケーキです。オーストリアでは長い歴史を持つ伝統菓子として、同国の食品法典の中で、伝統的な”ザッハー”を名乗るための材料や配分について詳細な定義を示しています。

しかし、「伝統ある」ザッハトルテにも2つの流れがあり、過去にはブランドと製法をめぐって裁判までして争った経緯があります。フランツ・ザッハーの死後、ザッハーの次男エドゥアルトが設立したホテル・ザッハーは、ザッハトルテのレシピを門外不出として同ホテルだけの名物としていました。しかし、3代目のエドゥアルトの代にホテル・ザッハーが財政難に陥り、ケーキのレシピをデメル菓子店に売却したことで、「オリジナル・ザッハトルテ」という名称を巡る数十年にわたる法的争いが始まりました。この争いは1963年に解決しましたが、それ以来、ホテル・ザッハーはチョコレートケーキを「オリジナル・ザッハトルテ」と呼ぶことが許され、競合のデメルの製品は「エドゥアルト・ザッハー・トルテ」または「デメルのザッハトルテ」として名乗ることになりました。

この2つの焼き菓子は他の点でも違いがあります。ザッハーのケーキはチョコレートグレーズの下にアプリコットジャムの層があり、中央にはデメルのケーキはグレーズの下にジャムの層だけです。(イラストはAI作成のイメージ図ですので、こうした違いは反映されておりません。)

日本でも食べられる本場のザッハトルテ

日本のケーキ屋さんでも、ザッハトルテは良く見られる定番ケーキです。それでも、オリジナルのザッハトルテには、長い歴史が持つ特有の味わいがあります。筆者も35年ほど前にウィーンのホテルザッハーで味わいましたが、既に舌の記憶は残っていません。しかし、ホテルザッハーのオリジナル・ザッハトルテは、同ホテルのオンラインショップから、世界中に発送してくれるようです。日本のザッハトルテを味わいつくした方は、試してみられてはいかがでしょうか。

上田 祐介
上田 祐介
チーフインベストメントストラテジスト
JTG証券経済調査室長 兼 チーフインベストメントストラテジスト。クオンツアナリストとして職歴を開始。その後は複数の大手外資系投資銀行などで主にクレジット市場関連の業務を歴任。海外クレジット市場の分析に強み。

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