ブラジルにおける輸送用エネルギーの産業構造と主要企業
本レポートでは、独自の特性を持つブラジルの輸送用エネルギー産業の構造、特にバイオ燃料分野に着目して解説。
ブラジルのエネルギー・ソース別供給量
- ブラジルは、再生可能エネルギーが一次エネルギー供給の50%を占める特異な国(OECD平均は約13%)。同国の再生可能エネルギーの供給量は、現在も継続して増大中。
- ブラジルの再生可能エネルギー・ソースの中で最も大きな構成比を持つのはサトウキビ由来のバイオ燃料(総エネルギー供給の17%を占める)。
ブラジルのセグメント別一次エネルギー消費量
- エネルギー消費が最も大きいセグメントは、産業部門(37%)と運輸部門(37%)。
- うち、運輸部門の94%は自動車による陸上(道路)輸送が占め、同輸送で消費されるバイオ燃料が同国のエネルギー消費の約3割を占める
ブラジルのエネルギー政策
- ブラジルのエネルギー拡張計画(PDE)では、輸送部門へのエネルギー供給の22%(2022年)を占めるバイオ燃料を2030年に約32%まで拡大する方針。
- ブラジル政府が行うバイオ燃料への政策支援;(i)エタノールの混合義務(ガソリン車向け)、(ii)バイオディーゼル混合義務(ディーゼル車向け)、(iii)グリーンディーゼル(HVO)の導入、(iv)国家バイオ燃料政策(カーボン・クレジットの活用)、(v)バイオ燃料競争力確保の憲法改正(20年間、バイオ燃料に不利な税制改正を禁止)、(vi)将来燃料法(脱炭素モビリティと新燃料技術を包括的に支援、バイオ燃料の混合比率の引き上げ)、など。
ブラジルの自動車輸送部門の燃料種別の供給量・消費量
ブラジルの自動車輸送燃料に係る企業と産業構造
- 自動車輸送燃料に係る主要企業; (i)石油由来燃料では国営石油会社ペトロブラスが独占的シェア、(ii)バイオ燃料生産では、Raízen社が最大手で国内生産の約20%を占める、(iii) 自動車燃料の供給(小売)では、Vibra Energia社(ペトロブラス系列)が3割、Raízen S.A.社と、Ipiranga Produtos社が、それぞれ2割のシェア。
- これらの企業の中で、最も信用格付けが高いのは、Raízen S.A.社。ただし、格下げ方向で見直し中であり、同等の格付となる可能性が高い。