トランプ大統領がみる未来の米国経済とは?(トランプ#1)
本動画では、トランプ大統領が進める関税外交の先に、どのような米国経済の未来を見ているのか、という点について確認する。
一般的なコンセンサス
- 高関税外交は対立を生み、結果として世界の交易量を減少させ世界経済を悪化させる。
- 経済が安定しているアメリカといえども経済成長の鈍化からは逃れにくく、米国株式相場も成長株の低迷とバリュー株の安定により、こうした市場の期待を反映している。
トランプ氏の関税外交の前提
ホワイトハウスの3月26日付のリリースでは、自動車・自動車部品への25%課税方針に加え、「関税の機能」について以下のコメントを行っている。
- 2024年の研究によれば、関税が「米国経済を強化し」、製造業や鉄鋼生産などの産業で「大幅なリショアリングにつながった」。
- 経済政策研究所によると、トランプ大統領1期目に実施された関税は「インフレとの相関関係がないことを明確に示し」、全体的な物価水準に一時的な影響を与えたに過ぎない。
- 前財務長官のジャネット・イエレン氏は昨年、関税が物価を引き上げることはないと断言し、「アメリカの消費者が直面する価格の大幅な上昇を目にするとは思わない」と述べた。
- 2024年の経済分析によると、世界全体で10%の関税が課せられると、経済は7,280億ドル成長し、280万人の雇用が創出され、実質家計所得は5.7%増加することがわかった。
トランプ大統領の政策の裏付けとなる経済研究
トランプ氏が言及した研究等の内容は、すべて、シンクタンクCPA ; Coalition For A Prosperous America
繁栄するアメリカのための連合のサイト内の主張に沿った内容。
同団体は、どちらかというと政策目的を共にする政治集団に近い。
同団体の「研究成果」は、トランプ氏が目指す政策方向性に一致しているが、学術的には充分に客観的な裏付けを持ったものとは言えない。さらに、ホワイトハウスの公式リリースで参照しているにも関わらず、その参照にも恣意的な「切り取り」が散見される。
結論
トランプ氏及びCPAの目指す関税外交には、広範な資本や人材の確保などを加味した国内産業の立ち上げ期間について、現実的ではない仮定を伴っている。このため、特に中間選挙までの2年間で、同氏らが求める産業構造の転換が達成できる可能性は低い。
それでも、トランプ大統領は現状の施策を続けざるを得ないため、結果として米ドル建て資産においては、高成長株式やハイイールド債の不安定な市況も継続しやすい。ただ、世界の他地域の経済もさらなる悪影響を受けやすいため、米ドル建て資産の相対的な優位性は変わりにくい。