トランプ政権の「OBBB法案」が起こす経済影響
本レポートでは、トランプ政権の「One, Big, Beautiful Bill(一つの大きく美しい法案)、以下「OBBB法案」 と表記」の内容について概説し、 同法案がアメリカの財政や経済に与える影響について解説する。
2026年予算決議の概要(法案審議の前提)
- 予算決議は、2025年から2034年までの10年間の財政枠組みを定め、税制改革、歳出削減、債務上限の引き上げなど、 トランプ政権の主要政策を推進するための基盤。
- 同法案の多くが現状の通り成立した場合、米国連邦政府の財政赤字は毎年約1兆ドルの財政赤字を継続し赤字幅も増加、 10年間で少なくとも2.8兆ドルの財政赤字を追加)、公的財務残高も10年間で約1.5倍に急増する見込み。
OBBB法案の概要と、個別政策の財政赤字への影響
- OBBB法案では、非常に広範な内容を含んだ内容が一括で審議されている。 ここでは、①税制改革、②医療・福祉改革、③家族・文化政策、④犯罪・治安政策、公共インフラ・経済主権政策、 の5分野について、法案の概要と米国政府の財政への影響をまとめた。
OBBB法案の米国財政への影響
- OBBB法案の米国財政への影響として、財政赤字の拡大に最も影響するのは、 2017年減税の恒久化(個人・法人)の▲3.5兆ドル、及び、100万ドルの出産ボーナス支給による▲3.6兆ドル、 製造業税制優遇など産業インセンティブの▲1.2兆ドルなど。 これに対し、歳出削減の効果が大きい施策は、メディケイド改革・削減の1.1兆ドルしかない。 よって合計で▲7.0〜7.2兆ドル規模の財政悪化が生じ得る内容(いずれも10年間の累計値)。
- OBBBに含まれる支出・減税措置の多くは、短期的な経済刺激には有効、 実質GDP成長率を年+0.3〜+0.6%押上げる短期効果を想定している。
- 一方で、長期的に見れば米国の財政健全性が損なわれやすい政策であり、 構造的問題の悪化を引き起こしやすい政策ともいえる。
- 今回のOBBB法案には、債務上限を名目的に撤廃し、実質的には約4兆ドルの増枠を認める改正案が含まれている。 同法案が成立すれば、2025年後半から2030年代初頭にかけての財政運営における資金調達制限が一時的に解消され トランプ大統領の在任中及び次代の大領領の在任期間において、議会が権限を有する予算に関連した法的手続きにより、 政策の執行を止められる可能性が著しく低下する。